2004年3月24日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
YAMAMOTO
CIRCULAR
2421
発行:〒656-0011兵庫県洲本市炬口1-3-19 東亜天文学会速報部 郵便振替口座:00980-8-189107 加入者名:東亜天文学会速報部 購読料1部130円 |
Published by the Department of Yamamoto
Circular, Oriental Astronomical Association P. O. Box No.32, Sumoto, Hyogo-Ken, 656-8691 JAPANe-Mail address: (Subscription) URL: http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/yc.htm |
編集:中野 主一 ☎ 0799-22-3747
Fax: 23-1104 e-Mail address: Editor: Syuichi Nakano, 3-19, Takenokuchi 1 Chome, Sumoto, Hyogo-Ken, 656-0011 JAPAN |
|
アテン型特異小惑星 2004 FH
LINEARサ−ベイで3月16日にてんびん座を撮影したCCDフレ−ム上の次の位置に発見された17等級の小惑星2004
FHは,その後の1日間に行なわれた追跡観測の結果,3月18.9日UTに地球に0.0003 AUまで接近し,10等級まで明るくなることが判明した(MPEC
2004-F24,F26).
2004 UT
α
(2000) δ Mag.
Mar. 16.34557 14h
58m 39s.34 - 5゚ 24' 33".7 17.9
この小惑星は,その接近前の19日05時JSTまで,我が国で追跡可能で,19日朝の観測が,美星(Bisei Spaceguard Center)と久万の中村彰正氏(Akimasa Nakamura)から報告された.そのときの光度は,10等〜11等級まで明るくなっていた.
OAA小惑星課では,3月16日の発見から,接近後の19日02時47分UTまでに行なわれた235個の観測から次の軌道を決定した.平均残差は0".50.なお,地球接近前の2004年3月16日の接触要素は,T
= 2004 June 25.7030 TT,ω = 338.5657,Ω = 358.3610,i = 3.5054,q = 0.532514 AU,e =
0.317825,a = 0.780612 AU,P = 0.69 年で,地球への接近のため,その軌道が大きく変化したことがわかるだろう.
T = 2004
June 22.9097 TT Epoch
= 2004 July 14.0 TT
。
ω = 21.7852
e = 0.288967 H = 26.4
Ω =
305.6479 (2000.0) a = 0.817562 AU G = 0.15
i = 0.0208
n゚= 1.3332856
q = 0.581313 AU
P = 0.74 年
OAA計算課では,この小惑星の対地経路を次のように計算した.この小惑星は,3月18日16時UTにパプア・ニュ−ギニア南端上空16万Km,18時にオ−ストラリア西部上空11万Km,20時に南インド洋上空6.9万Kmを動いたあと,22時08分UT頃に南大西洋上空(西経25゚,南緯31゚)で,地表面(この場合は,海水面)まで,4万2700Kmに接近した.その際の瞬間的な日々運動量は800゚を越えた.小惑星の標準等級はH=
26.4等で,その直径は,20m〜30mと推定される.なお,表の対地経路のλは,グリニジから東回りに測られた経度,φは地理緯度,光度(Mag.)は予報光度,Vは対地心速度(Km/sec.)で,経過地点との相対速度ではない.
2004 Time Mag. 日々運動 P.A. 対地経度 λ 対地緯度 φ 地表面から V
/UT
h m V
, 。 。 , 。 , の距離 Km Km/s
Mar. 18 15 00 13.4 3,122/239.7 170 29.7 -12 59.8 187,140 7.2
18 16 00 13.1 4,112/240.3 153 14.4 -14 14.7 162,330 7.2
18 17 00 12.7 5,712/241.0 135 11.6 -15 53.2 137,770 7.3
18 18 00 12.2 8,132/242.4 115 50.2 -18 07.4 113,640 7.4
18 19 00 11.7 12,526/244.6 94 09.3 -21 16.2 90,340 7.5
18 20 00 11.1 21,033/249.0 67 54.4 -25 43.2 68,820 7.6
18 21 00 10.7 35,195/258.9 32 09.3 -31 02.8 51,330 7.8
18 22 00 11.0 48,206/277.5 342 13.6 -32 01.2 42,850 8.0
18 23 00 12.2 39,853/293.7 292 46.4 -23 10.2 48,040 7.9
Mar. 19 00 00 13.6 23,588/300.1 257 26.3 -13 11.3 63,810 7.7
19 01 00 14.8 14,045/302.0 231 17.8 - 6 31.5 84,610 7.5
19 02 00 15.8 9,086/302.5 209 37.1 - 2 18.4 107,570 7.4
19 03 00 16.6 6,119/302.6 190 13.5 + 0 29.6 131,540 7.3
19 04 00 17.2 4,416/302.5 172 07.9 + 2 27.4 156,020 7.3
19
05 00 17.8 3,373/302.4 154 50.4 + 3 54.0 180,780 7.2
2
YAMAMOTO CIRCULAR
No.2421
|
いて座新星 Nova Sagittarii 2004 = V5111 Sgr
掛川市の西村栄男氏(Hideo Nishimura)は,3月16日午前4時半JST頃, ペンタックス 200-mmレンズ+T-Maxフィルムで,いて座を撮影した2枚の捜索フィルム上に
9.4等の新星を発見した.この新星は,同氏が行なっている2001年7月以後に撮影された捜索フィルム上には,その姿が見られなかった.また,3月13日朝に同氏が撮影した捜索フィルム上には,まだ,出現していなかった.この新星は,3月17日17時JST頃に,チリのリラー(Williams Liller)によっても,8.2等の明るさで独立発見された.リラーによると,彼の2月26日の捜索フィルム上にも,その姿が見られないとのこと.新星の出現位置は,カンサスのウェスト(D. West)によって測定され,α = 18h19m32s.29,
δ = -28o36'35".7と報告された.ウェストによると,過去に撮影されたDigital
Sky Survey上の発見位置にも,17.5等より明るい星は見られないとのこと.各地での眼視光度観測によると,この新星は,3月下旬に,8等級で観測されている(OAA計算課,新天体発見情報66,IAUC 8306).なお,新星は,西欧南天天文台(ESO)で3月18日にスペクトル観測された.また,三重の中村祐二氏(Y. Nakamura)の独立発見が報じられている(IAUC 8307).西村氏は,1994年に新彗星(中村・西村・マックホルツ彗星;OAA計算課,新天体発見情報bR参照),2003年8月には,たて座に出現した,また,別の新星を発見している(cf.
YC 2402).
小惑星 2003 VB12
山本速報2419で紹介した小惑星2004
DWよりさらに巨大な小惑星2003 VB12がパロマ−の1.2-mシュミットで2003年11月14日に くじら座を撮影したCCDフレ−ム上の次の位置に発見された.発見時の光度は20等級で,小惑星は,同シュミットで行なわれた2003年8月と9月のフレ−ム上に発見前の観測が見つかり,11月と12月に追跡観測され,今年3月にも観測された.また,2001年と2002年のパロマ−NEATサ−ベイのフレ−ム上にも,この小惑星の発見前の観測が見つかった.軌道計算の結果,この小惑星は,冥王星のはるか外を長円軌道で運行する天体であることが判明した(IAUC
8304).さらに,1990年と1991年のDSSイメ−ジ上にも,この小惑星の姿が見つかっている.
2003 UT
α
(2000) δ Mag.
Nov. 14.27288 3h
15m 10s.09 + 5゚ 38' 16".5 20.8
OAA小惑星課では,1990年から2004年3月19日までに行なわれた63個の観測から次の軌道を計算した.平均残差は0".49.
。
Mo=
357.7454
Epoch = 2004 July 14.0 TT
ω =
311.3641
e = 0.850493 H = 1.6
Ω =
144.5573 (2000.0) a =
508.8052 AU G = 0.15
i = 11.9319
n゚= 0.00008587696
q = 76.07006 AU
P = 11477 年
この小惑星は,その近日点距離が76
AU,遠日点距離が942 AUの長円軌道を動き,周期1万1500年ほどで太陽の周りを公転する天体となる.小惑星の標準等級は,1.6等ときわめて明るく,山本速報No.2419と同じ方法で直径を求めると1640Km(冥王星は直径2400Kmほど)になる.天体の運動は,極めて遅く,今の小惑星サ−ベイでは発見しづらい.そのため,数ヶ月ほど離れた過去の捜索フレ−ムを調べると,この種の天体はもっとたくさん見つかるだろう.また,カイパ−ベルト近傍のTNO天体の軌道の分布を考えると,この天体の近日点と遠日点ふきんを円軌道で運行する別の群の小惑星があるのかも知れない.
2004/2005
α (2000) δ △ r 日々運動 Elong. Phase
V
0h TT h m 。 , AU AU , PA 。
。 。 等
Aug. 3 03 19.15 +06 03.3 89.496
89.363 0.2/123 82.1 0.6 21.2
23 03 19.28 +06 01.1 89.148
89.344 0.2/202 100.9 0.6
21.2
Sept.12 03
19.13 +05 57.8 88.822 89.326 0.3/235 119.8 0.6
21.2
Oct. 2 03 18.72 +05 54.0 88.553
89.308 0.5/245 138.7 0.4
21.2
22 03 18.10 +05 50.0 88.373
89.290 0.6/251 157.0 0.2
21.2
Nov. 11 03
17.37 +05 46.5 88.303 89.272
0.6/256 168.0 0.1 21.1
Dec. 1 03 16.62 +05 44.0 88.351
89.254 0.5/261 156.1 0.3
21.1
21 03 15.96 +05 42.8 88.510
89.236 0.4/269 137.3 0.4
21.2
Jan. 10 03
15.50 +05 43.1 88.758 89.218
0.2/290 117.6 0.6 21.2
30 03 15.29 +05 44.9 89.063
89.200 0.1/ 4 97.7 0.6
21.2
2004
March 24
Ⓒ Copyright 2004 OAA
Syuichi Nakano