2004年8月17日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
YAMAMOTO CIRCULAR
2435
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マックノ−ト周期彗星 P/2004
K2 (McNaught)
2004年8月11日と13日の観測がLINEARサ−ベイ,8月11日の観測が那賀川の堀寿夫氏と前野拓氏(H.
Hori & H. Maeno, Nakagawa)から報告された.LINEARサ−ベイのCCD全光度は19等級,堀・前野氏のそれは18.2等であった.彗星は,まだ,しばらく観測できる(cf.
YC 2428).
OAA計算課では,2004年5月20日から8月13日までに行なわれた56個の観測から次の軌道を計算した.平均残差は0".74.
T = 2004 June 16.8543 TT Epoch = 2004 June 4.0 TT
ω = 180o.7977
e = 0.502258
Ω = 150.1359 (2000.0) a = 3.123819 AU
i = 8.1248
n゚= 0.1785153
q = 1.554855 AU
P = 5.52 年
なお,この彗星の公転周期の誤差はP=±0.47日で,軌道は,18公転してT=1896年1月3日に戻る.惑星へ大きく接近する軌道が残っているものの山本速報2428にあるD/1895 Q1 (Swift)との同定は難しくなった.
2004/ α (2000)
δ △ r Elong. Phase m1
0h TT h
m
。 , AU AU 。 。 等
Aug.
13 02 48.06 +09 18.1 1.169 1.650 98.0
37.4 18.0
23 03 03.52 +09 04.8 1.125 1.684
104.0 35.6 18.0
Sept.
2 03 15.61 +08 31.3 1.084 1.722
110.7 33.2 18.0
12 03 23.88 +07 39.7 1.047 1.764
118.4 30.1 18.1
22 03 27.95 +06 33.3 1.017 1.808
127.0 26.3 18.1
Oct. 2 03 27.77
+05 17.4 0.997 1.856 136.5
21.8 18.2
12 03 23.62 +03 59.0 0.991 1.905
146.6 16.8 18.3
22
03 16.33 +02 47.2 1.003 1.956 156.4
11.7 18.4
Nov. 1 03 07.28
+01 51.1 1.037 2.009 163.8 7.9
18.6
11 02 58.01 +01 17.5 1.094 2.063
163.7 7.7 18.8
21 02 50.00 +01 09.6 1.175 2.118
156.6 10.7 19.1
Dec. 1 02 44.28
+01 26.3 1.278 2.174 147.3
14.2 19.4
m1 = 15.5 + 5 log △ + 10.0 log r
2004年7月16日出現の大火球 Fireball
on 2004 July 16
美星スペ−スガ−ドセンタ−の橋本就安氏(Nariyasu
Hashimoto, Bisei)によると,2004年7月16日20時29分JST頃に,継続時間が非常に長い−4等級の明るい火球が西日本各地で見られた.この火球は,橋本氏が運営する海南天文台(徳島県)と満濃公園(香川県)に設置された2台の人工天体落下監視TVカメラに捕らえられた.氏によると,この火球は,20時28分56秒頃に日本の南,太平洋上空に現れ,紀伊半島上空を通過して,20時29分08秒頃に神戸市上空約91Kmを経て,日本海に入り,隠岐の上空を通過し,中国東北部に向け,飛行して行ったという.
橋本氏は,2台の監視TVカメラの映像から,次の対地経路を計算した.氏の解析では,観測輻射点は,α= 294o.68,δ= -39o.98(2000.0),火球の飛行(観測)速度は,V=
29.0 Km/sec. (±1.0 Km/s)とのこと.
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YAMAMOTO CIRCULAR
No.2435
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東経 北緯 高度
。 。
発光点:
137.49 +31.85 105 Km
通過点1: 135.05 +34.60 88
通過点2: 132.94 +36.83 74
OAA計算課では,橋本氏による上記の対地経路から,観測輻射点をα= 290o.57,δ= -36o.90(2000.0)と決定し,次の軌道を計算した.なお,火球が2つの観測地,海南天文台と満濃公園,の基線と平行に飛行しているため,sinQ=
0.0075(0o.4)と極端に小さく,輻射点の決定精度は悪い.また,地面への傾斜は,2o.56と大変に小さく,上記の発光点から通過点2までの実経路長は,694
Kmにもなる.なお,日周光行差と天頂引力を補正した速度は,V∞ = 26.78 Km/sec.,輻射点は,α= 293o.92,δ= -40o.33(2000.0)であった.
T = 2004 Aug. 24.73 TT
ω = 76o.63 e = 0.9784
Ω = 294.20 (2000.0) a = 29.169 AU
i = 15.02
n゚= 0.0062562
q = 0.6300 AU
P = 158 years
なお,観測速度がV= 11.0 Km/s以下では,軌道解は存在しない.また,29.5
Km/s以上だと,軌道は,双曲線になる.速度は,ビデオ・テープのコマから決定しているために大きな誤差はない.仮に,V= 28.0 Km/sであったとすると,火球の軌道長半径は,a=
9.12 AU(P= 27.5年)となる.
2004年7月22日出現の大火球 Fireball
on 2004 July 22
美星スペ−スガ−ドセンタ−の橋本就安氏(Nariyasu
Hashimoto, Bisei)によると,2004年7月22日01時06分10秒頃に,満月(約-12等級)より明るい火球が西日本各地で見られた.この火球は,橋本氏が運営する海南天文台(徳島県)と満濃公園(香川県)に設置された2台の人工天体落下監視TVカメラに捕らえられた.氏によると,火球は,経路の途中で数回にわたって爆発し,夜空を昼間のように明るく照らし,厚い雲に隠れるまで,その姿が捕らえられているという.また,消滅点近くの高知県では,各地に設置された地震計にその衝撃波が記録され,隕石落下の可能性もあるという.
橋本氏は,2台の監視TVカメラの映像から,次の対地経路を計算した.この経路によると,火球は,安芸市の北,約10 Kmで発光し,松山市方向に向け,飛行したことになる.氏の解析では,観測輻射点は,α= 358o.63,δ= +13o.09(2000.0),火球の飛行(観測)速度は,V=
13.5 Km/sec. (±1.0 Km/s),地表面への傾斜は45o.45であった.なお,隕石落下の場合,隕石は,地上高度約10
Km〜15 Kmから自然落下するものと考えられる.橋本氏の経路上の地上高10 Kmの地点は,東経133o.1,北緯 +33o.8(愛媛県桧皮峠ふきん)となる.
東経 北緯 高度
。 。
発光点: 133.88 +33.61 89.3 Km
通過点: 133.58 +33.68 60.0
OAA計算課では,橋本氏による上記の対地経路から,観測輻射点をα= 358o.37,δ= +14o.00(2000.0)と決定し,次の軌道を計算した.なお,sinQ=
0.6272(38o.8)で,日周光行差と天頂引力を補正した速度は,V∞= 7.65 Km/s,輻射点は,α= 8o.99,δ= +6o.90(2000.0)であった.
T = 2004 Oct. 26.91 TT
ω = 351o.81 e = 0.4473
Ω = 119.16 (2000.0) a = 0.7079 AU
i = 0.96
n゚= 1.65497
q = 0.3913 AU
P = 0.596 years
この結果によると,火球は,めずらしく,アテン型の小惑星の軌道を運行していた.OAA計算課では,これまでに,前国立科学博物館の村山定男氏(Sadao
Murayama, Tokyo)からの依頼で,数多くの隕石の軌道を決定してきたが,アテン型の軌道が計算されたのは,この火球が初めてとなる.なお,火球の軌道は,観測速度が11 Km/s以下では,軌道解が存在しない.観測速度が大きい側では,まず現実味のない50 Km/sまで,アテン型の軌道が計算される.つまり,その軌道解が存在するほとんどすべての範囲でアテン型の小惑星の軌道解となる.このため,この火球は,アテン型の軌道を運行していたことは間違いないだろう.
2004
August 17
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Syuichi Nakano