2004年10月24日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
Since 1920
YAMAMOTO
CIRCULAR
2442
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スペ−スウォッチ彗星
C/1997
BA6
(Spacewatch)
1999年11月にその近日点を通過したこの彗星は,今年9月になって,マウナケアで2日と15日に次のとおり観測された(MPC
52735).彗星のCCD全光度は21.8等であった.これで,彗星は,その発見以来,8年近く観測されたことになる.
2004 UT
α (2000) δ Mag.
Observer
h m s 。
, "
Sept. 2.53497
21 10 37.99 +31 57
40.9 21.8
Mauna Kea
2.54371 21 10
37.81 +31 57 40.5
"
15.38567 21 06 54.42 +31 34 56.5 21.8
"
15.39383 21 06
54.27 +31 34 55.3
21.9 "
この彗星の動きには非重力効果の影響が見られることを,OAA/CSのEMES等で指摘した(NK
998;
http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk/nk998.htm).しかし,現在の氷の蒸発を仮定した非重力効果では,近日点距離がq≒3 AUより大きな彗星に非重力効果が見られても,それをうまく解くことができない.軌道は,改良できるが,その非重力効果は,かなり大きな値となり,とても,論理的な数値とは言えなくなる.たとえば,この彗星の氷による非重力効果を群馬の小林隆男氏(Takao
Kobayashi, Oizumi)は,A1=+8.36,A2=+6.0659と計算している.これは,太陽エネルギ−の役割が,核からの蒸発≡核からの輻射に使われるか,その平衡点の日心距離をRo=2.808 AUと設定していることによる.つまり,近日点距離が,これより大きい彗星に非重力効果が見られた場合,現在の非重力効果(氷の昇華)では,Roを適当に変化させても,それを論理的な値として解くことはできない.
OAA計算課では,薮下理論(Shin Yabushita,
MN 283, 347 (1996))を使用して,非重力効果が表面からCO(or N2)分子の昇華によるものとして,1997年1月11日から2004年9月15日までに行なわれた503個の観測を使用して,次の軌道を計算した.平均残差は0".76となる(NK
1101;http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk/nk1101.htm).この軌道は,残差が2".1以内に上記の503個の観測を表現している.しかし,重力のみで改良した軌道は,2".4以内に473個の観測しか表現できない.この彗星を含め,ほとんどの近日点距離の大きな彗星では場合,観測期間が長くなるにつれ,重力のみによる軌道改良では,近日点近くの観測を表現できなくなる.しかし,CO分子の昇華による非重力効果を使用すると,それらを含め,ほぼ,すべての観測を表現でき,明らかに彗星の動きをうまく表現していることになる.なお,小林氏は,同じ観測群から薮下理論を使用して,Y1=+6.48,Y2=+0.1557を得ている.
Epoch = 1999 Dec. 8.0 TT
。 Y1
= +6.48, Y2 = +0.1388
T = 1999 Nov. 27.5664 TT ω = 285.9357
(1/a)org.= +0.000030
e = 0.998741
Ω = 317.6638 (2000.0) (1/a)fut.= +0.000398
q = 3.436274 AU i
= 72.7147
(
Q = 9 )
超新星 2004ez IN NGC 3430
山形市の板垣公一氏(Koichi Itagaki, Yamagata)は,60-cm f/5.7 反射望遠鏡+CCDカメラを使用して,10月16日,明け方近くに,こじし座にある系外銀河
NGC 3430 を撮影したサーベイ・フレーム上に17.3等の超新星 2004ez を発見した.超新星は,銀河核から東に46",北に18".7の位置に出現いる.同氏は,翌17日に,この超新星が同じ17.3等で存在していることを観測し,この出現を確認しました.板垣氏の超新星発見は,これで12個目となる.なお,この超新星は,板垣氏が保有する2000年以後の捜索フレーム上には,その姿が見られなかった.しかし,同氏の調査によると,発見直前の2004年10月1日に同銀河をサーベイした捜索フレーム上に,この超新星がすでに17等級で出現していたとのこと.また,上尾の門田健一氏(K. Kadota, Ageo)も,10月17日にこの超新星の出現を確認している.その光度は,17.2等とのこと(OAA計算課,新天体発見情報72,IAUC 8419).
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YAMAMOTO CIRCULAR
No.2442
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ファンネス彗星 C/2004
S1 (Van Ness)
山本速報2441にあるとおり,この彗星は,地球に0.65 AUまで接近し,発見された微小の彗星で,10月中旬には,さらに,0.32
AUまで接近し,日々運動5゚以上の高速で空を移動した.
OAA計算課では,2004年9月26日から10月17日までに行なわれた93個の観測から次の軌道を計算した.軌道改良に使用された最終観測は,上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)によるもので,彗星のCCD全光度は,10月16日に16.0等(堀寿夫,前野拓;那賀川),17日に16.2等(門田)と報告されている.なお,彗星は,離心率e=
0.9904,軌道長半径a= 70.7 AU,周期P= 595年ほどの長周期彗星であろう.
。
T = 2004 Dec. 8.9208 TT ω =
92.8174
Ω = 19.2197 (2000.0)
q = 0.681756 AU i =
114.6663
2004/ α (2000)
δ △ r Elong. Phase m1
0h TT h
m
。 ,
AU
AU 。 。 等
Oct.
27 19 40.46 +16 02.8 0.493 1.089 87.4
65.7 16.3
Nov. 1 19 06.25
+13 17.6 0.611 1.019 74.7
70.0 16.5
6 18 43.90 +11 17.9 0.733 0.951 65.0
70.8 16.6
11 18 27.94 +09 46.9 0.855 0.887 56.9
69.2 16.6
16 18 15.51 +08 32.4 0.973 0.828 49.9
66.0 16.6
21 18 05.06 +07 25.4 1.085 0.775 43.6
61.5 16.6
26 17
55.71 +06 19.5 1.188 0.732 38.0
56.0 16.5
Dec. 1 17 46.98
+05 09.9 1.279 0.701 33.0
49.9 16.5
m1 = 17.5 + 5 log △ + 10.0 log r
ASAS彗星 C/2004
R2 (ASAS)
近日点通過時の2004年10月7日から9日にかけて太陽近傍での彗星の動きがSOHO衛星で捕らえられた.しかし,彗星は暗く,予想ほど増光しなかった.OAA計算課では,SOHOの画像から次の位置を整約したが,10月7日のCCD全光度は5.6等であった.
10月17日になって,この彗星の観測を試みた上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)からの報告では,彗星の予報位置を中心に10'以内には14.5等級より明るい彗星状天体は見られなかったとのこと.使用した軌道は,下記のこの彗星の近日点通過時の観測を1'以内の精度で表現しているので,彗星は,すでに,消滅してしまったものと思われる.
2004 UT α
(2000) δ Mag. Observer
h m s 。 , "
Oct. 7.11042 12 40 39.4 -06 41 18 5.6 SOHO
7.36597 12 44
21.4 -06 10 04
"
7.52917 12 46
43.0 -05 49 21
"
8.19583 12 56
38.8 -04 25 58
"
9.53056 13 16
16.2 -02 02 45
"
OAA計算課では,2004年9月1日から10月9日までに行なわれた78個の観測から次の軌道を決定した.9月上旬のASASと10月のSOHOの観測には,低いウェイトをかけて,軌道改良に使用された.加重平均残差は0".94.
。
T = 2004 Oct. 7.8973 TT ω =
5.3542
Ω = 182.4640 (2000.0)
q =
0.112832 AU i
= 63.1740
オリオン座流星群 Orionids
in 2004
神戸の豆田勝彦氏(Katsuhiko
Mameta, Kobe)は,同市北区八多町で10月20/21日,21/22日,23/24日の3夜,この流星群を観測した.氏の報告によると,例年より,やや活発なHR10程度の出現が見られた.暗い流星が多いが,0等級より明るいものも3夜で計9個見られている.氏の観測は,10月20/21日,観測時間26:00〜27:00
JST,全流星17個,オリオン群9個,最微光星5.8等,以下,同順で,27:00〜28:00,20個,11個,5.8等,21/22日,26:00〜27:00,22個,11個,5.8等,27:00〜28:00,21個,10個,5.8等,23/24日,26:00〜27:00,18個,8個,5.6等,27:00〜28:00,21個,9個,5.7等,28:00〜29:00,23個,9個,5.7等であった.なお,今年の極大は,OAA計算課の予報では,10月21日05時JST頃と予報されていた.
2004
October 24
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Syuichi Nakano