2006年3月20日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
Since 1920
YAMAMOTO
CIRCULAR
2510
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シュワスマン・ワハマン第3周期彗星 73P/Schwassmann-Wachmann
3
山本速報2506に続く,主核C核の眼視全光度が2月28日に12.5等(中村一雄;高松),3月4日に12.2等(永島和郎;生駒),12.2等(中村),12.1等(相川礼仁;坂戸)と3月上旬には12等級まで明るくなったことが報告された(星の広場HAL-News
No.225〜227).また,中旬には11等級まで明るくなっている.彗星は,HICQ 2006(p.107〜109)にある光度予報に沿って,順調に明るくなっている.上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)は,それぞれの核のCCD全光度を3月3日にC核が12.5等,B核が14.7等,G核が17.4等と報告している(cf. YC 2492, YC 2502,
YC 2506).
OAA計算課では,山本速報2506と同じ観測の組み合せで3個の核の改良軌道を次のように計算した.使用された観測数は,それぞれ,651個(1995年〜2006年3月11日;平均残差0".78),250個(1995年〜同3月7日;0".82),119個(1995年〜同3月7日;0".92).
C核
B核
G核(E核)
Epoch = 2006 May 25.0 TT
T = 2006 June 6.95589 2006 June
7.92437 2006
June 8.10830 TT
ω = 198o.80474 198o.80042 198o.79710
Ω =
69.89538
69.89169
69.89299
(2000.0)
i
= 11.39577
11.39720
11.39752
q
= 0.9391402
0.9391052
0.9391898 AU
e
= 0.6931938
0.6932884
0.6931469
a
= 3.0610213 3.0618506
3.0607148 AU
n゚= 0.18403675
0.18396199
0.18406439
P
= 5.355
5.358
5.355 年
A1 = +1.25
+1.47
+3.16
A2
= -0.0492
+0.1967
-0.2305
3月4日から6日にかけて行なわれたレモン山でのこの彗星の観測によると,彗星には,主核から西北西の方向にさらに4個の核が見つかった.これらの核の形状は,H核は20.4等で4"のコマが西に伸びていた.J核は19.8等で8"のコマがあり,西に10"の尾が見られた.K核は21.7等で4"のコマがあった.L核は19.8等で5"のコマがあり,西に7"の尾が見られたと報告された(IAUC
8685).これらの核は,3月6日には,主核C核(括弧内はB核)からは,H核はT=+1.35日(+0.37日)の位置にあって,離角が1o.81(0o.48),J核はT=+1.20日(+0.22日)の位置にあって,離角が1o.68(0o.28),K核はT=+1.30日(+0.32日)の位置にあって,離角が1o.73(0o.41),L核はT=+1.42日(+0.43日)の位置にあって,離角が1o.88(0o.56)の位置を動いていた.
OAA計算課では,これらの核の今後の観測用に,それぞれの核が2001年にB核から分離したと仮定して,1995年/1996年と2000年/2001年のB核の観測と結んで,次の軌道を計算した.なお.主核C核の同時期の観測とは,すでに連結が行なえなかった.従って,これら4個の核が主核C核から分離したものでないことが推測される(http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk/nk1302.htm).
H核
J核
K核
L核
Epoch = 2006 May 25.0 TT
T = 2006 June 8.2866 2006 June 8.1330 2006 June 8.2324 2006 June 8.3433 TT
ω = 198o.8018 198o.8005 198o.8022 198o.8014
Ω = 69.8902
69.8905
69.8903
69.8897
(2000.0)
i = 11.3985
11.3982
11.3984
11.3988
q = 0.939089
0.939081
0.939099
0.939076 AU
e = 0.693361
0.693332
0.693349
0.693373
a = 3.062523 3.062206
3.062433
3.062606 AU
n゚= 0.1839014
0.1839300
0.1839095
0.1838940
P = 5.359
5.359
5.359
5.360 年
A1
= +1.11
+1.36
+1.12
+1.14
A2
= +0.3982
+0.3147
+0.3672
+0.4313
- continued -
2
YAMAMOTO CIRCULAR
No.2510
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2006/JST
予報 見かけ上の尾の 月からの May 12 光度
位置角/長さ
離角 m1 。 。 。 C核: 2.6等 249/30.8 103 B核: 7.3等 241/18.3 95 G核: 9.3等 239/15.0 94 H核:
13.8等
236/ 1.63 92 J核:
13.0等
238/ 1.62 93 K核:
14.8等 237/ 1.62 92 L核:
13.0等
235/ 1.63 91 |
これら4個の核は,4月上旬には,17等〜16等級となり,小望遠鏡でも観測可能となる.また,5月の最接近時には,12等〜13等級まで明るくなるだろう.以上の軌道から,これら7個の核が接近時にはどのように見えるか,2006年5月12日03時JSTのそれぞれの核の位置を描いたのが左の図である.この日は,ほぼ満月であるが,午前04時前には月は沈む.一方,天文薄明が03時半頃には開始する.そのため,月光の影響のない条件で彗星をわずかの間,観測できる最後のチャンスとなる.このあと,月光の影響がなく見られるのは5月20日すぎとなろう.この5月12日の図に描かれたそれぞれの核の予報光度と尾の見かけ上の長さは左の表のとおりとなる.なお,見かけ上の尾の長さは,天文年鑑2006(p.173)にも紹介したとおり,前回の出現より,0.03
AUほどであったものと推測される.そこで,尾の実長をC核は0.05 AU,B核0.025 AU,G核は0.020 AU,その他の核は0.002 AUとして計算した.この値は,彗星の尾の実長としては極めて短い.いずれにしろ,彗星がきわめて地球に接近するために,尾は長く見えることになる.尾をながめるための条件(位相角)もきわめて良い.ただし,非常に淡いことが予想される.未発見の核が突然明るくなることも考えられる.これらには十分注意することが望まれる.もし,存在するならば,各々の核を結ぶ,ほぼ延長線に見えることになる.
ポイマンスキ彗星 C/2006
A1 (Pojmanski)
山本速報2506に続く,彗星の眼視全光度が2月27日に4.9等(中村一雄;高松),3月3日に5.3等(中村),5.2等(相川礼仁;坂戸),4日に5.5等(岩城好高;橋本),6.2等(橋本秋恵;秩父),5.4等(大下信雄;飛騨),5日に5.7等(菱倉勉;横浜),7日に5等級,11日に6等級(石井ひとみ;秋田)と報告されている.3月4日から5日にかけてデジタル・カメラによって,大下氏,合志の工藤哲生氏,大分の柏木周一氏,岐阜の牛丸幸平氏らによって撮影された映像では,10o近い尾が見られている(星の広場HAL News No.225〜228).CCD全光度は,2月24日に6.9等,3月3日に5.9等,4日に6.2等(門田健一;上尾),6.5等(下元繁男;土佐),14日に7.2等,15日に7.3等(浅見敦夫;秦野)と観測されている(cf.
YC 2502, YC 2504, YC 2506).
OAA計算課では,2006年1月4日から3月15日までに行なわれた178個の観測を使用して,次の軌道を決定した.平均残差は0".54.軌道改良に使用された最終観測は,浅見氏によるもの.2006年3月末までの位置予報がYC
2504にある.
Epoch = 2006 Mar. 6.0 TT
。
T = 2006 Feb. 22.1816 TT ω = 351.1878
e = 0.999767
Ω = 211.3428 (2000.0)
q = 0.555397 AU i
= 92.7359
LINEAR彗星 C/2004
B1 (LINEAR)
山本速報2506で紹介したこの彗星は,上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)よって,3月13日に観測された.山本速報2506にある軌道からのずれはなかった.氏によると,彗星には,集光した1'ほどのコマが見られるが,尾は,見られなかった.氏のCCD全光度は12.8等で,眼視全光度では,恐らく10等級くらいなのだろう.なお,3月20日の大分の柏木周一氏(S.
Kashiwagi, Oita)の観測でも,彗星の光度は10等級であることが報告されている(cf. YC 2417, YC 2439,
YC 2506).
2006 March 20
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Syuichi Nakano
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