2005年5月1日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
Since 1920 YAMAMOTO CIRCULAR
2514
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シュワスマン・ワハマン第3周期彗星 73P/Schwassmann-Wachmann
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山本速報2510にL核までの分裂核の発見を紹介したが,彗星が地球に接近してきた観測効果の影響で,さらにAT核までが見つかった.これで,現在,観測されている核は,明るい核,C核,B核,G核を始めとしてAT核まで40個になった.40個の核の軌道を前号2513に示した(IAUC 8692, IAUC 8693, IAUC 8703, IAUC 8704;
cf. YC 2492, YC 2502, YC 2506, YC 2510, YC 2513).なお,この山本速報の編集後,BM核まで新たな核19個が見つかったので,図と表に加えた.これらの核は,彗星が地球に接近してきたために観測効果で発見された微小の核で,もっとも明るいBI核でもH10=19.6等.上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)も独立して見つけたBC核は,氏の観測光度が16.3等であったが,H10=20.1等と暗い.
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しかし,このように,20等級前後の微光の核でも,5月中旬の接近まで生き残れば,14等〜16等級前後で観測できるものもある.たとえば,図1の5月11日には,J核は13.4等,L核は13.7等,N核は13.9等,R核は12.9等,Y核は13.2等,AQ核は11.9等,AS核12.8等,BI核は14.0等と明るくなり,さらに,接近時には,12等級前後まで明るくなるだろう.ただし,微光の核は,光度の増減が激しく,必ずしも明るくなるとは限らない.また,たとえば,J,S,T,Y核のように消滅したと思われる核もあることに注意.なお,同じ日(5月11日朝)には,C核は5.5等,B核は5.0等,G核は8.0等くらいまで明るくなることが期待される.接近時には,これらの明るい核を重点にながめるのが良いだろう.なお,4月末現在,C核とB核の眼視全光度は,7等級まで明るくなっている.
ところで,B核は,4月上旬には,眼視全光度で9等級まで増光し、主核C核(9.5等級)より明るくなった.4月中旬になって,B核から分離した新しい核AQ核が観測された.このため,B核のその頃の増光は,B核がAQ核に分裂したとき,一時的に明るくなったものであろう.また,G核も月末には12等級まで増光してきた。一方,主核C核の増光は鈍く、この状況が続けば、接近時の光度は5等級どまりとなるだろう.4月中旬には,B核の増光も止まったようで,やはり4等級どまりとなるだろう.なお,4月下旬にB核が,また増光したという情報がある.B核からの新たな分裂核が生まれるかも知れない.B核の動向には,今後も注意が必要である.
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YAMAMOTO CIRCULAR
No.2514
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2006年5月12日03時JST 地球との 核
離角/PA 距離 光度 移動量/PA 最接近日と接近距離 No 。 。 AU m1 , 。 UT
AU AT 8.9/138 0.088
15.8 341.8/112 May 11.3 0.0878 AS 7.6/138 0.086
12.7 347.6/111
11.3 0.0864 BA 6.2/139 0.085
16.9 354.1/111
11.5 0.0849 BD 6.2/138 0.085
18.9 354.6/111
11.5 0.0847 AV 6.0/139 0.085
17.5 355.0/111
11.5 0.0846 AZ 5.4/139 0.084
15.9 358.1/111
11.8 0.0839 BC 3.6/138 0.082
16.4 365.6/111
12.0 0.0821 AP 3.5/139 0.082
15.6 366.0/111
12.0 0.0820 AR 1.5/136 0.080
17.1 374.2/110
12.3 0.0800 BE 1.2/137 0.080
17.5 374.9/110
12.3 0.0798 AF 1.2/136 0.080
15.8 375.1/110 12.3 0.0797 C
0.079 5.5 379.3/110
12.5 0.0786 BF 0.9/326 0.078
17.9 382.5/110
12.5 0.0778 BB 2.0/320 0.077
15.8 385.9/109
12.8 0.0769 Q 12.0/319 0.071
14.8 406.7/105 14.0 0.0691 AW
12.7/319
0.071 15.2 407.4/104
14.0 0.0686 P 14.4/319 0.070
15.3 408.4/103
14.3 0.0675 AO
14.5/319
0.070 16.5 408.5/103
14.3 0.0674 B 15.2/319 0.070 4.8
408.9/103 14.3 0.0669 AQ
15.2/319
0.070 11.8 408.8/103
14.3 0.0669 G 18.3/319 0.069 7.8
408.3/100 14.8 0.0649 AU
18.3/319
0.069 15.8 408.4/100
14.8 0.0649 J 18.9/320 0.069
13.3 408.3/100
14.8 0.0646 R 19.9/319 0.069
12.8 407.4/ 99
14.8 0.0639 K 20.6/320 0.069
15.2 406.9/ 98
15.0 0.0635 S 20.6/320 0.069
15.6 407.0/ 99
14.8 0.0635 M 21.3/319 0.069
15.3 406.0/ 98
15.0 0.0631 AM
21.3/319
0.069 15.9 406.0/ 98
15.0 0.0631 N 21.5/320 0.068
13.8 405.7/ 98
15.0 0.0630 Z 21.5/319 0.068
16.5 405.8/ 98
15.0 0.0630 H 21.7/319 0.068
14.2 405.6/ 98
15.0 0.0629 AN
22.4/320
0.068 14.9 404.7/ 97
15.0 0.0624 L 22.7/320 0.068
13.6 404.4/ 97
15.0 0.0623 AE
23.0/320
0.068 16.0 403.8/ 96
15.3 0.0621 AL
24.8/319
0.068 15.5 400.5/ 95
15.3 0.0610 AK
25.2/320
0.068 15.1 399.7/ 94
15.5 0.0608 W 25.7/320 0.068
16.0 399.0/ 94
15.5 0.0605 X 26.9/320 0.068
15.8 395.9/ 92
15.5 0.0598 BH
27.1/320
0.068 18.7 395.5/ 92
15.5 0.0598 AH
27.3/320
0.068 15.6 394.9/ 92
15.5 0.0596 BI
28.1/319
0.068 13.9 392.7/ 91
15.8 0.0592 AD
28.6/320
0.068 15.9 391.5/ 91
15.8 0.0589 BJ
28.8/320
0.068 16.7 390.9/ 90
15.8 0.0588 AC
29.2/320
0.068 15.3 389.7/ 90
15.8 0.0586 AJ
29.3/320
0.068 15.6 389.6/ 90
15.8 0.0586 AB
29.4/320
0.068 15.1 389.0/ 90
15.8 0.0585 AI
29.9/320
0.068 15.5 387.6/ 89
16.0 0.0582 BG
30.2/320
0.068 17.6 386.6/ 89
16.0 0.0580 AY
30.6/320
0.067 15.1 385.4/ 88
16.0 0.0578 Y 31.1/320 0.068
13.1 383.6/ 88
16.0 0.0576 T 31.6/320 0.067
15.9 382.4/ 87
16.0 0.0573 BK
32.8/320 0.068 17.9 377.6/ 86 16.3 0.0567 BL
32.9/320
0.068 17.2 377.3/ 85
16.3 0.0566 BM
34.0/320
0.068 16.4 373.3/ 84
16.3 0.0560 U 35.1/320 0.068
15.3 369.4/ 83
16.5 0.0555 AG
35.5/320 0.068 14.2 367.4/ 82 16.5 0.0553 V 36.1/320 0.068
16.0 364.7/ 81
16.5 0.0550 AA
36.6/320
0.068 14.5 362.3/ 80
16.8 0.0547 AX
44.8/320
0.069 15.8 320.7/ 67
17.5 0.0508 |
山本速報2510続いて,月明の影響を受けない2006年5月11日03時JSTと月明のなくなる5月24日03時JSTの59個の核の位置を図1と図2に示す.これらの図では,各々の核の尾の実長をC核が0.05
AU,B核が0.025 AU,G,AQ,AS核が0.02 AU,J,L,N,R核が0.015 AU,H,Q,Y,AA,AG,AN,BI核が0.01 AU,その他の核が0.005
AUとして描いてある.ただし,実際には,このような長い尾よりも,地球に接近したため,大きく拡散したコマが見られるであろう.なお,天文ガイド「彗星のページ(p.162)」に5月12日と23日の同様の図があるので,参考にして欲しい.
C核が地球にもっとも接近するのは,図1の時刻(午前03時)の約1.5日の5月12.5日UTで,接近距離は0.0786 AU.表には,C核の接近日における他の核の離角と位置角,そのときの地球からの距離と予報光度,各々の核の地球接近日とその距離を示した.これらの核の中で,AT〜AFまで11個の核は,C核より東側(運動方向側)に位置する.その他の47個の核は,西側に見えることになる.59個の核の中で,地球にもっとも接近するのはAX核で5月17.5日に0.0508
AUまで地球に接近する.C核の接近日には,AX核は,C核から北西の方向に約45oも離れて見える(ただし,17等級).
彗星は、その近日点通過がC核より遅れるほど、地球に接近する。もし,仮にAX核よりさらに近日点通過が遅れた核が存在するならば、その核は、より地球に近づくことが予想される.このため、それらの破片からの流星雨も期待できるかも知れない.C核がもっとも近づくときの明るくなると思われる核のC核からの離角は、表のとおり大きく,明るいすべての核を同時に撮影することは困難であろう。しかし,5月24日の朝は,図2のとおり,すべての核の地球接近が終了し,各々の核は,見かけ上,近づいて見えることになる.なお,地球に接近した観測効果の影響で,突然,明るい核が出現する可能性もある.また,分裂核が集まった領域が明るく見える可能性もある.5月の接近時には,各々の核を結ぶ線上には,特に注意を払うことが必要である.
2006 May 1
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Syuichi Nakano
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