2006年6月29日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
Since 1920
YAMAMOTO
CIRCULAR
2519
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バーナード第2周期彗星 P/1889
M1 = P/2006 M3 (Barnard 2)
LINEARサーベイから2006年6月23日にいて座とへびつかい座の境界ふきんを撮影したフレーム上の次の位置に発見された17等級の小惑星状天体が報告された.6月23日に,イタリーのバッジ(L.
Buzzi, Varese)が,この天体を60-cm反射で観測したところ,天体は,周囲の同程度の恒星に比べ多少,惚けぎみで,強い中央集光を持つ6"ほどの円形のコマが見られた.ウルガイのサルボ(R.
Salvo, Los Molinos)と豪州のブロートン(J. Broughton, Reedy
Creek)の6月24日の観測では,この天体は彗星であることが報告された.これらの観測から決定された初期軌道から,中央局のグリーン(D.
W. E. Green, CFA)は,この天体は,1889年に出現した周期が約120年のバーナード第2彗星の初めての回帰であることを見つけた(IAUC
8726).当時,この彗星の軌道計算は,1889年にベルベリッヒ(A.
Berberich)によって行なわれ,周期が約128年ほどの周期彗星であることがわかっていた(1889, A.N. 123, 77).彗星の周期には約±10年(幅にして20年)ほどの誤差があるが,その氏の軌道からの今回の近日点通過は2017年頃となる.軌道は,その後,マースデンとセカニナ(B.
G. Marsden & Z. Sekanina)によって改良されている(1972, Q.J. 13, 428).この軌道の周期は約145年となり,今回の近日点通過は2032年頃と推測されていた.
2006 UT
α (2000) δ
Mag.
June 23.25870 17h 43m 38s.68 -27゚ 26' 53".5 17.1
OAA計算課では,1889年と2006年に行なわれた62個の観測から次の軌道を計算した.平均残差は1".26.軌道改良に使用された最終観測は上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)による.氏のCCD全光度は15.1等であった.下の予報光度は氏の観測を基にしたもの(http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk /nk1350.htm
& http://www.spaceguard.or.jp/ja/mpnews/0077.html).なお,本会会長の長谷川一郎氏(I.
Hasegawa, Kobe)によると計算された過去軌道と同定できる彗星は古記録上にないという.
Epoch
= 1889 June 7.0 2006 Aug.
13.0 TT
T = 1889 June 21.23166 2006 Aug. 28.68789 TT
ω = 60o.14391 60o.46210
Ω = 272.54490
272.06648
(2000.0)
i = 31.22043
31.21754
q = 1.1029690
1.1071868 AU
e = 0.9539862
0.9543982
a = 23.970374
24.279473 AU
n゚= 0.0083983090
0.0082384440
P = 117.36
119.64 年
上の軌道からの今後の予報位置は次のとおり.なお,彗星は,1889年出現時には,発見直後(近日点通過時)の6月には,彗星は9等〜10等級前後(H10= 8.8等)で観測されたが,8月にはH10= 10等〜11等に減光した.長周期彗星には,近日点近くで,このような光度変化をするものが多い.幸い,近日点通過が2006年8月末なので,その頃までに数等級ほど増光することが期待できる.そのため,今後の光度は,もう少し明るくなるかも知れない.
2006/ α (2000)
δ △ r Daily Motion Elong. Phase m1
0h
TT h m 。 , AU AU , 。 。 。 等
June 29
17 34.62 -21 14.5 0.446 1.454 81.5/343 166.9 9.1
14.9
July
4 17 26.58 -14 43.7 0.411 1.407
92.1/345
158.4 15.5 14.6
9 17 18.76
-07 17.8 0.386 1.362
99.1/347 148.9 22.7 14.3
14 17 11.52
+00 45.9 0.371 1.319 101.1/349
138.9 30.4 14.1
19 17 05.14
+09 02.3 0.366 1.279 97.7/351 129.1 38.0
13.9
24 16 59.86
+17 04.9 0.370 1.243 90.4/353 119.9 45.1
13.8
29 16 55.86
+24 33.6 0.381 1.209 81.2/355 111.8 51.2
13.7
Aug.
3 16 53.22 +31 17.9 0.397 1.180
71.7/358
104.8 56.3 13.7
8 16 51.96
+37 16.1 0.417 1.155 63.0/
0 99.0 60.1 13.7
13 16 52.06
+42 31.1 0.439 1.135 55.5/
3 94.5 62.9 13.8
m1 = 15.0 + 5 log △ + 10.0 log r
2
YAMAMOTO CIRCULAR
No.2519
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LINEAR・ヒル周期彗星 P/2004
V5 (LINEAR-Hill)
彗星核が分裂したこの彗星の観測が引き続き行われている.主核A核の2006年4月〜5月のCCD全光度は,17等〜18等級くらいと予報よりも少し明るい.また,副核B核は18等〜19等級で観測されている.モントカブレ(バルセロナ近郊)での2006年5月25日の観測では,A核の全光度は18.9等,このとき,A核からのB核の離角は91".3(位置角307゚.1)であった.
OAA計算課では,2003年12月17日から2006年5月25日までに行なわれた544個の観測からA核の軌道,2004年11月10日から2006年5月25日までに行なわれた431個の観測からB核の軌道を次のように計算した.平均残差は,それぞれ,0".58と0".62.次回の近日点通過は,A核が2027年8月4日,B核が8月5日となる(http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk/nk1346.htm).なお,分裂に関する推測が山本速報2451に紹介されている(cf. YC 2446, YC 2451).
P/2004 V5 - A P/2004
V5 - B
Epoch = 2005 Mar. 11.0 TT
T = 2005 Feb. 28.74356 2005 Mar. 1.01772 TT
ω = 87o.69044 87o.69524
Ω =
47.85872
47.85907
(2000.0)
i = 19.35820
19.35827
q = 4.4108516
4.4109009 AU
e = 0.4452125
0.4452442
a = 7.9505246
7.9510676 AU
n゚= 0.043965335
0.043960832
P = 22.42
22.42 年
A核とB核の軌道からの予報位置とB核のA核からの今後の離角と位置角は次のとおり.なお,A核の光度パラメータは,HICQ
2006用にグリーン(D. W. E. Green, CFA)によって決定されたもの.
P/2004 V5 - A P/2004 V5 - B A核からの
2006/ α (2000) δ m1 α (2000) δ m1 △ r 離角 /位置角
0h
UT h m
s 。 ,
" 等 h m
s 。 ,
" 等 AU AU " 。
June 29 12 23 47.4 +09 45 26 18.6 12 23 43.0 +09 46 15 19.6 5.099 5.105 81.0/307.1
July 4 12 25 33.0 +09 14 49 18.7 12 25 28.7 +09 15 37 19.7 5.186 5.118 79.4/307.1
9 12 27 32.0 +08 43 29 18.7 12 27 27.8 +08 44 16 19.7 5.272 5.130 77.9/307.2
14 12 29 43.5 +08 11 31 18.8 12 29 39.4 +08 12 18 19.8 5.357 5.143 76.4/307.3
19 12 32 06.7 +07 39 01 18.8 12 32 02.7 +07 39 47 19.8 5.440 5.156 74.9/307.4
24 12 34 41.0 +07 06 03 18.8 12 34 37.1 +07 06 47 19.8 5.521 5.169 73.6/307.5
29 12 37 25.6 +06 32 41 18.9 12 37 21.8 +06 33 25 19.9 5.601 5.182 72.3/307.6
Aug.
3 12 40 19.8 +05 59 02 18.9 12
40 16.0 +05 59 45 19.9 5.678
5.195 71.0/307.7
m1 = 8.0 (B核: 9.0)+ 5 log △ + 10.0 log r
ロバス第2周期彗星 D/1986
W1 (Lovas 2)
山本速報2398にあるとおり,1986年に出現以来,見失われているこの彗星が今年11月23日に近日点を通る.彗星は,現在,ほぼ,衝位置を動き,予報光度は14等級まで明るくなっている.OAA計算課では,1986年12月2日から1987年3月3日までに行なわれた27個の観測から,次の予報軌道を計算した(http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk/nk650
& nk946.htm).初回出現時の彗星の観測期間は約3ヶ月間,その周期の誤差は±1.42日ほどとなる.ただし,彗星は1986年の出現以後に3公転している.このため,近日点通過の誤差は少なくとも約±5日(= 1.42日x3公転),幅にして10日ほどあることになる(もっと大きくなっている可能性が高い).この彗星の1993年の初めての回帰のときに,その検出を試みたが,彗星が明け方の低空に位置していたこともあり,彗星を検出できなかった(天文ガイド1993年9月号「ミードLX200と冷却CCDによる彗星・小惑星観測システム」参照).今回の回帰でも,悪天候の中,6月20日の夜に近日点通過の誤差にしてTで±2日の範囲を探したが,15等級より明るい天体は見つからなかった.ただし,彗星は,今後,観測条件が悪くなるものの,12等級までさらに明るくなることが期待される.なお,今回の回帰の前に,彗星は,2005年1月に木星に1.48
AUまで近づき,その軌道を少し変えた.しかし,2015年11月には木星に0.23 AUまで,接近し,2020年の回帰では,その軌道を大きく変える.そのため,ぜひ,この回帰で再発見されることを期待したい.位置予報はICQ
Comet Handbook 2006(p.125)にある.
T = 2006 Nov. 23.8153 TT Epoch
= 2006 Dec. 11.0 TT
ω = 76o.2707 e
= 0.602517
Ω = 279.2856 (2000.0) a = 3.524023 AU
i = 1.5479
n゚= 0.1489862
q = 1.400739 AU
P = 6.62 年
2006
June 29
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Syuichi Nakano
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