2007年8月27日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
Since 1920
YAMAMOTO
CIRCULAR
2566
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こぎつね座の新星 V458
Vulpeculae = Nova Vul. 2007
松江市の安部裕史氏(Hiroshi
Abe, Matsue)は,8月8日22時頃JSTに夏の天の川にあるこぎつね座をキャノンEOSキス・デジタル・カメラにペンタックス35-mm f/2.8レンズをつけて,30秒露光で撮影した捜索フレーム上に9.5等の新星を発見した.安部氏は,最近では,7月23日,31日,8月4日夜JSTにも,この星域を捜索していた.しかし,その夜の捜索フレーム上の出現位置に11.5等級より明るい星は,見当たらなかった.上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)は,同夜にこの新星状天体を確認し,その出現位置を赤経α= 19h54m24s.64, 赤緯δ= +20o52'51".9; 光度9.4等と観測した.また,門田氏によると,この新星状天体は,Digital
Sky Survey(DSS)で過去に撮影されたフレーム上にも,その姿が見られないとのこと.さらに門田氏の調査によると,USNO星表には,その出現位置の0".4以内に,17等級の微光星が存在している.この恒星は,新星の出現位置にきわめて近く,新星は,この微光星と同じ星である可能性もある.
安部氏は,その発見の翌日,8月9日夜にこの超新星の出現を確認した.そのとき,超新星の光度は8.4等まで増光していたが,その後の光度は,中旬以後は9等級まで減光し,8月12日に9.1等,19日に8.6等,21日に10.1等と観測されている.なお,安部氏は,過去に多数の小惑星を発見しているが,新星状天体の発見はこれが初めて.氏によると,1993年から行なっていた新星捜索を,昨年8月に再開し,ちょうど1年目,40数夜のパトロールでこの星を発見した(OAA計算課新天体発見情報110,
IAUC 8861, CBET 1029, CBET 1035, CBET 1038, IAUC 8863).
ぎょしゃ座流星群 Aurigids
in 2007
ジェニスケンスとボーバイロン(P.
Jenniskens et al., SETI)は,過去に何回かの突発出現が観測されているこの流星群の今年の出現を予報している.流星群の母彗星は,1911年に出現した周期が約2500年のキース彗星(1911
N1)であると考えられている.彼らによると,ジョルジーニ(J.
Giorgini, JPL)が新たに改良したこの彗星の軌道を使用して,前回の回帰(西暦4年6月28日頃)にこの彗星から放出されたダスト・トレイルが2007年9月1日11時33分UTに地球に-0.000334 AUから-0.000067
AUに接近し,流星群が出現するという.その輻射点は,赤経α= +92o,赤緯δ= +39o,出現の継続時間は約1.5時間で,短時間の出現数は,ZHR約200個ほどに達するかも知れないとのこと.
OAA計算課でも,この彗星の軌道を新たに計算した.その軌道によると,前回の近日点通過は,西暦前18年12月28日頃となる.いずれにしても,観測期間が短い上,観測も良くないために,周期の誤差は,その幅にして100年ほどあることに注意.その軌道から,古在理論(cf.
YC 2386, YC 2429, YC 2433, YC 2460)を使用して,粒子の予報軌道を下のとおり計算した.下の軌道は,第1行目が1911 N1の出現軌道からの過去軌道,2行目が古在理論で補正された粒子の軌道,3行目がその補正値,最後の軌道が粒子の2007年に接近する粒子の軌道となる.この結果によると,当日,地球に接近するのは,前回の回帰に,その近日点で+1.807-m/sの速度で放出された粒子が2007年9月1日11時33分UT(=
20時33分JST)に地球に-0.00030 AUまで接近することになる.これは,ジェニスケンスらの予報とほぼ同じとなる.
Object T /TT q e P ω Ω i a Epoch
1911 N1 -18 12 28.881 0.68576 0.99566 1987 110.039 158.098 148.732 158.05127 -18 12 24
Particle -18 12 28.880 0.68576 0.99580 2088 110.038 158.098 148.732 163.36843 -18 12 24
+1.807-m/s -.0005 +.000001 +.000141 +101.1 -.0008 0.0000 0.0000 5.317155
" 2007 07 26.181 0.68041 0.99643 2629 110.339 158.559 148.581 190.47938 2007 08 08
なお,我が国では,輻射点は,極大時刻頃には,まだ地平線下で,地平線上に現れるのは,9月1日23時JST頃となる.その1時間ごとの高度は,9月1日21時JSTに-12o.5,22時に-7o.6,23時に-0o.8,9月2日00時に+7o.5,01時に+17o.0,02時に+27o.2,03時に+38o.1,04時に+49o.3となる(北緯+35o.5).ただ,残念なことに,当夜は,満月直後の空となる.
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YAMAMOTO CIRCULAR
No.2566
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明るい超新星 SN
2007gr in NGC 1058
KAITOサーベイで2007年8月15日と16日にNGC
1058を撮影した捜索フレーム上に明るい超新星2007grが発見された.その光度は,8月15日に13.8等,16日に13.5等であった.超新星の出現位置は,赤経α=
02h43m27s.98,赤緯δ= +37o20'44".7で,超新星は,銀河核より西に24".8,北に15".8の位置に出現している.この超新星は,極限等級が18.9等の8月10日に撮影された捜索フレームには出現していなかった.山形の板垣公一氏(K.
Itagaki, Yamagata)によると,超新星は,2007年8月10日に撮影された極限等級が19.0等の捜索フレームには見られなかった.しかし,発見前の8月14日には14.5等,そして,15日に13.9等で,氏の捜索フレーム上に写っていた.なお,氏によると,この銀河は,近接銀河の1つとのこと(CBET
1034, CBET 1036, CBET 1041).
マックノート新彗星 C/2007
P1 (McNaught)
マックノート(R.
H. McNaught)は,サイデング・スプリングの50-cmウプサラ・シュミットで2007年8月7日にろ座を20秒露光で撮影したCCDフレーム上の次の位置に18等級の新彗星を発見した.発見時,彗星には40"の南西に広がったコマが見られた.マックノートによると,この彗星は,これまで彼が観測した彗星の中で,もっとも拡散した彗星で,測定も困難であった.発見翌日8日のガラッド(G.
J. Garradd)による同所での観測では,彗星は,幾分集光していたが,測定は,難しかったという.8月9日の51-cm反射によるブロートン(J. Broughton,
Reedy Creek)の観測では,彗星には30"のコマと北に2'の尾が見られた(IAUC 8861).
2007 UT
α
(2000) δ
Mag.
Aug. 7.72005 01h 59m 58s.59 -31゚ 40' 36".8 18.7
OAA計算課では,2007年8月7日から9日までに行なわれた12個の観測を使用して次の軌道を決定した.
。
T = 2007 Mar. 26.441 TT ω = 97.687
Ω = 190.878
(2000.0)
q = 0.63315 AU i =
122.962
マックノート周期彗星 P/2007
H1 (McNaught)
彗星は13等〜14等級に明るくなっている.上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)によるCCD全光度も,6月4日に15.2等,11日に15.3等,12日に15.2等,7月23日に14.4等,27日に14.3等,31日に14.3等,8月7日に14.1等と観測された.また,秦野の浅見敦夫氏(A.
Asami, Hadano)も8月15日に13.3等と観測している.彗星は,現在,ほぼ衝位置にあり,しばらくこの明るさで観測できるだろう(cf. YC 2554).
OAA計算課では,2007年4月17日から8月17日までに行なわれた256個の観測から次の軌道を決定した.平均残差は0".61.
T = 2007 Aug. 17.6300 TT Epoch = 2007 Aug. 8.0 TT
ω = 202o.6060
e = 0.378090
Ω = 144.3761 (2000.0) a = 3.667787 AU
i = 11.8740
n゚= 0.1403130
q = 2.281032 AU
P = 7.02 年
2007/ α (2000) δ △ r Daily motion Elong. Phase m1
0h
TT h m 。 , AU AU , 。 。 。 等
Aug. 28
00 21.01 -07 21.1 1.345 2.282 10.6/196 151.1
12.4 13.7
Sept. 7
00 18.50 -09 04.4 1.310 2.285 12.0/209 160.5 8.5
13.7
17 00 14.29
-10 48.7 1.299 2.291 12.2/217 167.5 5.4
13.7
27 00 09.26
-12 22.4 1.312 2.298 10.8/222 166.2 6.0
13.7
Oct.
7 00 04.44 -13 36.1 1.350 2.308 8.0/227 158.2 9.3
13.8
17 00 00.78
-14 23.4 1.410 2.320 4.2/232 148.5
13.0 13.9
27 23 59.01
-14 42.0 1.491 2.333 0.2/329 138.9
16.3 14.0
Nov.
6 23 59.51 -14 33.4 1.589 2.349 4.3/ 51 129.6
19.0 14.2
16 00 02.36
-14 00.7 1.701 2.366 8.2/ 54 120.8
21.0 14.4
26 00 07.47
-13 08.0
1.825 2.385 11.7/ 56 112.6 22.5
14.6
Dec.
6 00 14.57 -11 59.2 1.957 2.405 14.7/ 58 104.8
23.3 14.8
16 00 23.41
-10 37.9 2.096 2.428 17.2/ 59 97.4
23.7 15.0
26 00 33.70
-09 07.1
2.239 2.451 19.2/ 60 90.4 23.7 15.1
m1 = 9.5 + 5 log △ + 10.0
log r
2007
August 27
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Syuichi Nakano
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