2008年5月1日
山 本 速 報
ISSN
0915-9177
Since 1920
YAMAMOTO
CIRCULAR
2583
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SOHO彗星 C/2002
Q8 = 2008 E4 (SOHO)
クラハト(R.
Kracht)は,最近出現したクラハト群に属するSOHO彗星(2008 E4)が過去に出現したSOHO彗星(2002 Q8)と同定可能であることを指摘した(MPEC F32
(2008), cf. YC 2579).
OAA計算課では,2002年と2008年に報告された24個の両彗星の観測を使用して次の連結軌道を計算した.平均残差は8".46.彗星は,1997年2月15.3日TTに近日点を通過していたが,このとき,SOHO衛星のC2カメラの写野には入ってこない位置にあったという.なお,次回の近日点通過は,2013年9月10.5日で,その回帰時,9月20.8日には,水星に0.0033
AUまで接近することになる.このとき,水星は,東方最大離角に向かう位置にあり,その日没時高度は,+9o.0(方位角74o.2)で,地上からの彗星の観測が可能であるかも知れない.
T = 2008 Mar. 2.9966 TT Epoch = 2008 Feb.
24.0 TT
ω = 48o.1882 e = 0.983654
Ω = 55.0847
(2000.0) a = 3.123793 AU
i = 12.8518
n゚= 0.1785175
q = 0.0510604 AU
P = 5.52 年
ODAS周期彗星 198P/ODAS
(1998 X1 = 2006 B7)
1990年代,フランスのコート・ダジュールで行なわれていたODAS小惑星サーベイで1998年に発見された周期が6.7年のこの彗星は,2005年5月に回帰が予報されていた.しかし,その回帰時には,彗星は検出されなかった.2008年3月になって,小惑星センターのウィリアムズ(G.
V. Williams)は,キットピークとレモン山で2006年に行なわれたサーベイ画像上に発見され,報告されていた20等級の天体がこの彗星と同じものであることを見つけた.調査の結果,彗星のイメージは,2006年1月,2月,3月の7夜の観測群中に見つけられた(IAUC
8929, IAUC 8930).彗星の位置は,NK 844(= HICQ 2004)にある予報軌道から赤経方向に-592",赤緯方向に+261"のずれがあり,近日点通過時刻の補正値にして儺=+0.70日であった.予報軌道は,約4ヶ月の観測期間から計算されたもので,予報は,比較的良くあっていたことになる.
小惑星センターでは,1998年と2005年の観測からその連結軌道の計算を試みたが,すべての観測をうまく表現することができなかった.しかし,その運動に非重力効果の係数をA3項まで考慮するとすべての観測が表現できることが筆者によって指摘された(IAUC
8935).従来の氷の昇華を考慮した非重力効果では,非重力効果の係数は,当初,A1= +15.81, A2= -0.3861, A3= -2.07と大きいものであった.しかし,非重力効果がCOの気化によるものと考えると,その係数をY1=
+3.87, Y2= +0.1036, Y3= -1.72まで小さくすることができた.ただし,これは,COの気化は,その軌道の全周で起きているため,当然の結果となる.幸いにも,2005年10月7日に行なわれていた彗星の観測が見つかり,氷の昇華による非重力効果の係数も,下記にあるとおり,A1
= -2.41, A2 = +1.0205, A3 = -2.2928と小さくなった.なお,仮に彗星に働く非重力効果をCOの昇華によるものとすると,その係数は,Y1=
-1.06, Y2= +0.1678, Y3= -1.8832となる.いずれにしても,この彗星は,その軌道面に垂直に働く非重力効果が大きいことになる.
OAA計算課では,1998年から2006年までに行なわれた186個の観測から,次の連結軌道を計算した.平均残差は0".60(http://www.oaa.gr.jp/~oaacs/nk/nk1596.htm).なお,筆者によって,LONEOSサーベイの1999年2月12日の一夜の観測群中にこの彗星の観測が見つけられている.彗星は,2042年9月24日に木星に0.15
AUまで接近し,その軌道は,q= 3.357 AU, e= 0.231, ω= 189o.5, Ω= 240o.5, i= 8o.8と大きく変化するだろう.
T
= 2005 May 3.25918 TT Epoch = 2005 Apr. 20.0 TT
ω = 69o.05231 e = 0.4472206
A1 = -2.41
Ω
= 358.72643
(2000.0) a = 3.5834339 AU A2 = +1.0205
i
= 1.34839
n゚= 0.14529644 A3 = -2.2928
q
= 1.9808484 AU
P = 6.78 年
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YAMAMOTO CIRCULAR
No.2583
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こと座流星群 Lyrids
in 2008
神戸の豆田勝彦氏(Katsuhiko
Mameta, Kobe)は,六甲山(海抜約600-m)で2008年4月21/22日夜に,満月の下,この群の定常観測を行ない,その出現状況はHRにして5〜10個程度であったことを報告している.氏の観測は,4月21/22日,26:20〜27:00,全流星3個,こと群2個,最微光星4.0等,以下同順で,27:10〜27:35,2個,1個,4.0等である.なお,この流星群の今年の極大は,4月22日昼頃JSTと推測されていた(cf.
YC 2555).
ギッブス新彗星 C/2008
G1 (Gibbs)
ギッブス(A.
R. Gibbs)は,2008年4月7日にレモン山サーベイの1.50-m反射望遠鏡でへび座頭部を撮影したCCDフレーム上の次の位置に19等級の新彗星を発見した.発見当時,彗星には,4"ほどの小さなコマと南西に65"の細い尾が見られた.イタリーのブッジ(L.
Buzzi, Varese)の60-cm反射による4月7日の観測では,彗星には南西に10"の尾が見られた.また,ギルモアら(A.
C. Gilmore & P. M. Kilmartin, Mt. John)が4月9日にマウント・ジョンの1.0-m反射で観測したところ,彗星には,小惑星状のコマと南南西に15"の尾が見られた.彗星は,4月7日から9日にかけて,多くの地点で追跡され,約10"ほどのコマと20"ほどの尾が見られることが報告された(IAUC
8932).
2008 UT
α (2000) δ
Mag.
Apr. 7.35552 15h 29m 45s.12 +04゚ 54' 32".1 19.4
OAA計算課では,2008年4月7日から24日までに行なわれた54個の観測から次の軌道を決定した.
。
T = 2009 Jan. 11.012 TT ω = 63.503
Ω
= 216.005 (2000.0)
q = 4.00005 AU i
= 73.065
はくちょう座新星 No.2 2008 = V2491
in Cygni
福岡県久留米市の西山浩一氏(Koichi
Nishiyama, Kurume)と佐賀県みやき町の椛島冨士夫氏(Fujio Kabashima,
Miyaki)は,共同で行なっている新星サーベイで,4月11日早朝02時27分JSTに はくちょう座を105-mm f/5.6 レンズ+CCDカメラで撮影した2枚の捜索フレーム上に7.7等の明るい新星を発見した.氏らは,最近では4月4日と8日早朝にこの星域を撮影していたが,その捜索フレーム上には,12等級より明るい星は,出現していなかった.また,氏らによると,この新星は,Digital
Sky Survey(DSS)で過去に撮影されたフレーム上にも,その姿が見られなかった.西山氏と椛島氏は,発見翌日の朝(4月12日早朝01時JST)にこの新星は,光度が
7.1等まで増光し,存在することを確認した.新星の出現位置は,赤経α= 19h43m01s.96, 赤緯δ= +32o19'13".8.この新星は,中国でも,発見同日05時頃JSTに撮影された捜索フレーム上にも写っていたことが報告された.また,我が国各地でも発見の朝に7等級で撮影されていたことが報告された.我が国では,上尾の門田健一氏(K.
Kadota, Ageo)によって,4月12日02時46分頃に捕えられ,氏は,その光度を7.4等と観測している.また,門田氏は,出現位置のごく近くに16等級の暗い星があったことを指摘している.なお,新星発見の公表後,埼玉の三ツ間重雄氏(S.
Mitsuma, Honjo)と津山の多胡昭彦氏(A.
Tago, Tsuyama)からも発見の報があった(OAA計算課新天体発見情報122,IAUC 8934).
超新星 SN
2008bt in NGC 3404
山形市の板垣公一氏(Koichi
Itagaki, Yamagata)は,2008年4月14日夕刻,21時49分JSTに うみへび座にある系外銀河 NGC 3404を60-cm
f/5.7反射望遠鏡+CCDで撮影した捜索フレーム上に,氏の今年4番目の超新星発見となる16.6等の超新星 2008btを発見した.板垣氏は,4月4日JSTにも,この銀河を捜索していたが,その夜の捜索フレーム上の出現位置に18.5等級より明るい星は,見当たらなかった.また,この超新星は,板垣氏が保有する多数の過去の捜索フレーム上にも,その姿が見られなかった.板垣氏の測定によると,この超新星は,銀河核から西に14",南に1"の位置,赤経α=
10h50m16s.99, 赤緯δ= -12o06'31".5に出現している.この超新星の出現は,板垣氏の発見1日前の4月13日14時頃にKAITO超新星サーベイからも報告された.そのため,板垣氏の1日後の発見がその確認観測も兼ね,発見が公表された.板垣氏発見の翌日4月15日には,この超新星のスペクトル観測が行われ,極大近くのIa型の超新星出現であることが報告された.板垣氏は,これで,38個目の超新星を発見したことになり,氏が持つ我が国での超新星,最多発見数をさらに更新した(OAA計算課新天体発見情報123,CBET
1336)
2008 May 1
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Syuichi Nakano
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