◎サングレーザ彗星 Sungrazer Comet (From YC 2464)
山本速報2452で紹介したとおり,太陽を掠める彗星群の中で,マースデン族
に属する彗星は,周期が5年ほどの短周期彗星である可能性がある.このたび,
マ−スデン(B. G. Marsden, CFA)は,新たに1999 N5と2005 E4が同定できる可
能性があることを指摘した.さらに,彼によると,過去に戻した軌道を調べた結
果,山本速報2452にある1999 J6 = 2004 V9と1999 N5 = 2005 E4は,1993年に
分裂した可能性があるという. さらに,彼は,1999 U2もその分裂から生じた可
能性が大きいこと, もし,これが正しい場合,1999 U2は,2005年10月8日前後
に回帰するだろうということを指摘している(MPEC E87, IAUC 8494, cf. YC 24
52).
OAA計算課では,1999 J6 = 2004 V9と 1999 N5 = 2005 E4の観測から,それぞ
れの2回の出現を連結して,それらの軌道を1993年の戻した.その軌道は,次の
とおりとなる.
Object T/TT q e P ω。 Ω。 i。 Epoch
1999 J6の過去軌道 1993 11 24.274 0.051793 0.983361 5.49 20.961 83.206 28.395 1993 11 29
1999 N5の過去軌道 1993 11 20.984 0.051561 0.983782 5.67 21.164 83.114 28.077 1993 11 29
これらを MPEC E87にある軌道と比べると,1999 J6の近日点通過には1.61日の
差がある.一方,1999 N5のそれは 0.0日と差がない.しかし,軌道の精度は,
1999 J6が儕=±0.20日, 1999 N5が儕=±1.46日と,1999 J6の方が精度が良い.
また,観測も3倍近く多い.従って,1999 J6の方がものが大きいのであろう.
なお,3月13日に東京の大塚勝仁氏(K. Ohtsuka, NMS)から,クラハト(R.
Kracht)が,今回発見された2005 E4が1999 U2と同定されるのではないかと指摘
していることが報告された.前述のとおり,この彗星 1999 U2について,マ−ス
デンは 2005年10月に回帰だろうということを指摘している.OAA計算課では,こ
の彗星1999 U2と2005 E4が同定される可能性がないか,その連結軌道を計算した
が,この可能性は完全に否定できる.
そこで,これら2つの彗星がマ−スデンの言うとおり1993年に分裂したものと
して,1999 J6の1993年の過去軌道を使用して,1999 N5の1999年の出現軌道を表
現すると,近日点通過時に彗星が分裂速度+35.4-m/sec.で運動方向,前方に分裂
すれば, ほぼ,1999 N5の出現軌道を下のとおり,表現できる.なお,彗星は,
近日点通過時には,毎秒80-Km/sec.を越える速度で運動している.
Object T/TT q e P ω。 Ω。 i。 Epoch
1999 J6の過去軌道 1993 11 24.274 0.051793 0.983361 5.49 20.961 83.206 28.395 1993 11 29
儼= +35.4 m/s 1993 11 24.275 0.051831 0.983680 5.66 21.001 83.206 28.395 1993 11 29
儼= +35.4 m/s 1999 07 11.195 0.049434 0.984419 5.65 21.973 81.905 26.902 1999 07 01
1999 N5の出現軌道 1999 07 11.195 0.049221 0.984503 5.66 22.158 81.794 26.591 1999 07 01
さらに,分裂速度を補正した軌道を 2005年へ進め,2005 E4の出現軌道と比較
すると,次のとおりとなり,近日点通過に3.37日ほどの差が生じる結果となる.
Object T/TT q e P ω。 Ω。 i。 Epoch
儼= +35.4 m/s 2005 03 07.182 0.049409 0.984430 5.65 22.078 81.759 26.783 2005 03 11
2005 E4の出現軌道 2005 03 10.546 0.049199 0.984514 5.66 22.266 81.644 26.472 2005 03 11
この結果が1993年に彗星が分裂して,1999年に1999 J6と1999 N5として見られ
たかどうかは,定かではない.しかし,ここで,仮にそれが正しいとして,1999
U2にこのことを応用すると,1999 J6の1993年の過去軌道にその分裂速度を +93.1
-m/sec.とすると,下のとおり,1999年の近日点通過を1999 U2のそれと合わせる
ことができる.
Object T/TT q e P ω。 Ω。 i。 Epoch
1999 J6の過去軌道 1993 11 24.274 0.051793 0.983361 5.49 20.961 83.206 28.395 1993 11 29
儼= +93.1 m/s 1993 11 24.277 0.051892 0.984203 5.95 21.067 83.206 28.395 1993 11 29
儼= +93.1 m/s 1999 10 25.227 0.049537 0.984900 5.94 21.743 82.251 27.263 1999 10 29
1999 U2の出現軌道 1999 10 25.227 0.0491 1.0 21.90 82.02 26.94
さらに,上の軌道から計算された 1999 U2の2005年の回帰時の軌道は,下記の
とおりとなる. なお,1999 N5 = 2005 E4と同じ程度,近日点通過が遅れるなら
ば,その近日点通過は,T= 2005 Oct. 9.4 TTとなるだろう.
T = 2005 Oct. 6.039 TT Epoch = 2005 Sept.27.0 TT
ω = 21o.887 e = 0.98484
Ω = 82.059 (2000.0) a = 3.28293 AU
i = 27.083 n゚= 0.165696
q = 0.049768 AU P = 5.95 years
下の位置予報は,上の軌道から計算されたものである. ここで,1999 U2の明
るさがどの程度であったのか定かではない.SOHOのウェッブにある画像を見たが,
彗星がどれだかよく分らない.そこで,一般的なSOHO彗星は,近日点近くで7等
級になるものとして,下の予報光度を計算した.
2005/ α (2000) δ △ r Variation Elong. Phase m1
0h TT h m 。 , AU AU for儺=+1 day 。 。 等
Aug. 3 18 45.30 -61 15.1 0.758 1.616 +1.13 +30.0 130.8 28.4 21.5
8 17 50.35 -61 34.6 0.728 1.533 +3.06 +29.4 122.5 33.9 21.2
13 16 55.77 -60 18.5 0.708 1.447 +4.90 +23.8 113.2 40.0 20.9
18 16 07.97 -57 38.8 0.699 1.358 +6.17 +14.4 103.6 46.4 20.6
23 15 29.44 -54 02.1 0.698 1.265 +6.85 + 3.2 93.7 52.9 20.2
28 14 59.37 -49 54.5 0.703 1.168 +7.13 - 8.4 84.0 59.3 19.9
Sept. 2 14 35.77 -45 33.8 0.712 1.066 +7.22 -19.5 74.3 65.6 19.5
7 14 16.59 -41 08.6 0.724 0.959 +7.26 -30.2 64.8 72.1 19.1
12 14 00.07 -36 39.4 0.737 0.843 +7.33 -41.1 55.3 78.8 18.6
17 13 44.71 -31 59.6 0.751 0.719 +7.49 -52.8 45.5 86.2 17.9
22 13 29.13 -26 54.9 0.767 0.582 +7.77 -66.8 35.3 95.2 17.1
27 13 11.81 -20 58.9 0.790 0.426 +8.22 -85.3 24.0 107.2 15.8
Oct. 2 12 50.67 -13 12.6 0.837 0.237 +8.95 -114.5 10.7 128.2 13.4
7 12 51.68 -03 21.3 1.075 0.085 +4.25 -144.1 2.1 25.4 9.4
m1 = 20.0 + 5 log △ + 10.0 log r
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